目次
はじめに
こんにちは、薬学生です。
本日は、DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)についてのお話です。
最近、CoinDeskの記事を読むようにしているのですが、先日以下のDAOに関する考察記事を見かけました。CoinDeskは日本語版サイトもありますが、こちらの記事は日本語訳されていませんでした。そのため今回は、こちらの記事を和訳しつつ学習しましたので、皆さんにも和訳をご紹介いたします。
イントロ
分散型自律組織(DAO)は、大勢の人々が自律的に意思決定を行うことを可能にして、すでに世界を変えつつあります。ブロックチェーン技術によって実現したこれらの組織は、従来、公共・民間組織の戦略策定・監督を実施してきた中央集権的な経営陣の必要性を排除しつつあります。
しかしDAOには、その最も重大な脆弱性を修正できるような変化が必要なのかもしれません。現在のDAOモデルは人間が運営しており、その結果、DAOの判断に誤りが生じやすいです。人工知能(AI)の利用はそうした誤りをなくし、DAOをより効果的なものにすると思います。
DAOとは
DAOは、透明性のあるコンピュータプログラムとしてエンコードされたルールをベースとした組織です。DAOは、その組織のメンバーによってコントロールされ、分散化されています(現在の形態では半中央集権的ですが)。組織のルールはコードに埋め込まれているので、管理者は不要です。DAOは、従来の組織に存在する官僚主義や階層のハードルを排除します。
DAOの台頭は、インターネットユーザーが長年抱いてきた“どうすれば信頼できる環境で価値を交換できるのか?”という疑問に起因していると言えるでしょう。ブロックチェーン技術の出現により、信頼できる取引や価値の交換の自動化が実現し、世界中のインターネットユーザーが共通の目標を達成するために安全かつ効果的な方法で組織化できるようになりました。
金融取引やDAOのルールはブロックチェーン上に記録されるため、第三者機関を介する必要がなく、スマートコントラクトを通じて取引を簡素化できます。
DAOはガバナンストークンを採用しており、多くの場合、保有者に議決権として利用されます。ほとんどの場合、これらのトークンを通じて、プロトコルの分散的なガバナンス、あるいはトークン自体のガバナンスを行います。
DAOの台頭
2021年は、DAOが広く一般に認知されるようになった年でした。それまでは、DAOは投資、慈善事業、資金調達などいくつかの目的を担っていましたが、いずれも小規模なものでした。
昨年の大規模な成長により、DAOに参加する人は現在、全世界で約100万人に達しています。ConsenSysによると、主要な20のDAOを合わせると、140億ドル以上のデジタル資産を保有しています。また、DAOの拡大はCompoundやMakerDAOといった大手DeFiプレイヤーに限った話ではありません。小規模なDAOも出現し、広がりを見せています。昨年最も人気を博したDAOの1つがConstitutionDAOで、米国憲法の貴重なコピーを手に入れるために、1週間足らずでおよそ4700万ドルを調達しました。
ConstitutionDAOは目的を達成できませんでしたが、このプロジェクトが主要なメディアで大きな反響を呼んだことは、このようなプロジェクト、そしてさらに大きなプロジェクトが今後数年のうちに現れることを示唆しています。ConstitutionDAOは、歴史的な文書を取得するためのDAOだったのか、一時的な資金調達の仕組みだったのかと疑問を持つ人がいるかもしれませんが、DAOがさまざまな業界に変革をもたらす可能性があることを示しました。
DAOは音楽業界にも影響を及ぼしています。昨年5月、JennyDAOは最初のNFTであるSteve Aokiと3LAUのオリジナル曲を獲得しました。JennyDAOは、NFTのフラクショナルオーナーシップ※を提供するメタバースグループです。ConstitutionDAOの場合とは異なり、どのNFTを取得するかはメンバーが決定します。JennyDAOでは、Uniclyのスマートコントラクトを利用してNFTの管理を実施しています。
※フラクショナルオーナーシップ:1つのNFTの所有権をスマートコントラクトの技術を利用して分割し、複数のユーザーが共同所有すること(例:BAYCの記事)
成長の軌道
2022年は、DAOの参加者数と資金調達額の観点から見て、さらに成長する年になるかもしれません。DAOの成長は、金融、医療、芸術、法律などの従来のアプローチの手法を覆し始めています。(なお多くの人が誤解していますが、多くのDAOは、資金調達をする組織ではありません)。
また、DAOは、世界中の人々が同時に複数のプロジェクトの意思決定プロセスに参加できるようにすることで多様性の問題を解決し、今後数ヶ月の間に分散型環境を統治するツールとして、さらに利用されていくことでしょう。
人工知能への転換
人工知能が進むべき道を示してくれると考えます。というのも、DAOは著しく台頭したものの、その潜在能力を最大限に発揮する妨げとなるヒューマンエラーに悩まされ続けています。
汎用型AI(Artificial General Intelligence: AGI)は、人間の代わりにタスクを実行することで、より良い道を提供することができるかもしれません。言い換えると、AGIは、人間のような柔軟な思考と推論を、瞬時の数値計算やその他のコンピュータの利点と組み合わせて、より良い意思決定を行うことができると考えます。
究極的にDAOのゴールは、人間の階層的な管理なしに機能することです。AIを利用したDAOでは、人間のバイアスを排除するために、コミュニティの参加者は、意思決定プロセスにおいて彼らを代表するAIエージェントを選択します。選抜されたAIエージェントは、自分たちの製品やサービスを作り、それを販売し、その利益を参加者に還元するために、自律的に協力して最適な意思決定を行うことになるのです。
多くのDAOは、ブロックチェーンやその他の新技術の恩恵を受けながら、今後数カ月から数年のうちにこの改良型モデルに移行していくと思われます。将来的には、多くのDAOが人間による制御から自動化に移行すると思われます。そうなれば、DAOはAIやブロックチェーン、その他の新興技術をフルに活用して、さらに効率化することができるようになるでしょう。
AIを利用したDAOは、人間の偏見やミスを排除することで、コスト面でもメリットがあると思います。真の意味で自律した組織(生物)となり、より良いビジネスの方法を生み出すという本来のDAOのビジョンを実現することになるでしょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。こちらの文章を書かれたMarcello Mari氏は、SingularityDAOというDeFiとAIを組み合わせたプロジェクトに所属しているということもあり、少しAIに寄った考え方が強い印象を受けました。ただ、今後DAOがさらにDAO化していくためには、人間以外の力を借りた方がベターな場面が多く出てくるのも現実なのかと思いました。
また、個人的にはDeFiのプロジェクトを運営するような営利目的のDAOと、ある種、社会人サークルのような非営利のコミュニティとしてのDAOの2パターンが存在している印象です。DAOの議論をするときには、DAOの定義や前提条件をしっかり確認することが必要ですね。
以上、DAOについての考察記事の紹介でした。またDAOについても今後の行く末を追っていきたいと思います。
※なるべく読みやすいように意訳などをしておりますので、もし間違っているところがありましたら、Twitterなどでご連絡いただけると助かります。